自民党の派閥の中で、麻生派(志公会、54人)の拡大傾向が目立っている。平成24年12月の第2次安倍晋三政権発足以降は入閣数もトップクラスで、派を率いる麻生太郎副総理兼財務相の存在感が際立つ。二階俊博幹事長率いる二階派(志帥会、47人)の伸長も著しいが、麻生、二階両氏とも安倍晋三首相(自民党総裁)との協力関係を力の源泉としてきた。来秋の首相の党総裁任期が近づく中、こうした構図に変化は起きるのか。 「人事については首相が権限を持っているので、コメントは控えたい」 自民党最大の細田派(清和政策研究会、97人)幹部の世耕弘成参院幹事長は28日の記者会見でこう述べ、次の内閣改造・自民党役員人事への具体的な言及を避けた。細田派からは第2次政権発足から28人(延べ数、以下同)が入閣し、他派をしのぐ。97人という規模を考慮すれば、首相の出身派閥で他派に配慮する事情があるとはいえ、少ない印象を拭えない。 その点、当初は27人だったメンバーを旧山東派(番町政策研究所)との合流などで54人まで増やした麻生派は、旧山東派から閣僚になった3人を含め、25人を入閣させている。 首相も今月16日に都内で開かれた麻生派の政治資金パーティーで、「第2次安倍政権の発足から7年半、まさに『屋台骨』として支えていただいたのが麻生副総理だ」と持ち上げるなど、麻生氏に寄せる信頼は厚い。 麻生派以上の伸びを示すのが二階派だ。野党から入党した議員だけでなく、他派からも積極的に取り込み、所属議員は2倍超の47人に増えた。 田中角栄元首相を政治の師と仰ぐ二階氏は、「数は力」の論理で動いた田中派のDNAを色濃く受け継ぐ。「角栄先生を思い出さない日は一日もない」と話すほど敬慕し、他派から「二階派はかつての田中派のようだ」と評される。 田中派の流れをくむ竹下派(平成研究会、54人)は、平成30年初めに派内で額賀福志郎会長(当時)に退任を迫った「額賀降ろし」が象徴するように、往時の鉄の結束にほころびが目立つ。所属議員は10人増、入閣者は18人にとどまる。 「ポスト安倍」を狙う岸田文雄政調会長率いる岸田派(宏池会、47人)からは、26人が入閣した。岸田氏は発信力の弱さをたびたび指摘されるが、今の内閣には入閣待機組だった竹本直一科学技術担当相(衆院当選8回)ら2人を押し込み、領袖(りょうしゅう)の面目を保った。 この7年半で新たに誕生した石破派(水月会、19人)は、発足時の20人からメンバーを1人減らした。「ポスト安倍」の有力候補とされる領袖の石破茂元幹事長は世論の高い支持を得ながら、自民党の議員には支持の広がりを欠く。 石破氏は「うちはベンチャー企業のようなもの。(仲間が自分以外に)18人いるのはありがたい」と強調するが、総裁選に向け、党内基盤の強化が大きな課題となる。(力武崇樹)
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